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にきびは非常にありふれた皮膚疾患で、日本人の90%以上が経験する病気と言われています。
なんとなく「若いころよくできるポツポツ」としてイメージされることが多い疾患ですが、
・赤いのも白いのもにきび?
・大人になってからできるのもにきび?
・にきび菌のせいだからにきび菌を殺せば治る?
という疑問を突き詰めていくとかなり奥深い疾患です。
今回の記事ではにきびの病態~治療方法(保険診療、自費診療、日本未承認治療含む)を解説します。
にきびとは
にきびの定義
にきびの定義
毛包脂腺系を反応の場とし,面皰(コメド)を初発疹とし,紅色丘疹,膿疱,さらには囊腫,硬結の形成も見られる慢性炎症性疾患(日本皮膚科学会ガイドラインより引用)
専門用語が多くわかりにくいですが、最も大事なのは「面皰(コメド)を初発疹とし」という部分です。
面皰(コメド)は皮脂で毛穴が詰まって毛包内に皮脂が溜まってしまった状態で、いわゆる白にきびや黒にきびのことです。
面皰の内部でにきび菌(アクネ菌)が増殖し炎症反応が起こることでいわゆる赤にきび(丘疹)や化膿して膿が溜まったにきびに発展していきます。
にきびの治療
にきびの根本の原因は面皰ができること(毛穴が詰まること)なのでにきび菌を殺す治療だけでは不十分で、
①毛穴の詰まりを治す
②にきび菌を殺菌する
の2つの観点から治療薬を選んでいく必要があります。
毛穴の詰まりを改善する治療
ベピオローション・ベピオゲル(過酸化ベンゾイル)
1日1回外用する薬です。
過酸化ベンゾイルのピーリング作用で古い角層(皮膚の一番表面側)を取り除き毛穴の詰まりを改善する薬で、目に見えないマイクロコメドにも効果があるため治療効果だけではなく予防効果もあるのが特徴です。
またベピオ自体に殺菌作用があるので一人二役の優秀な薬と言えます。
使い始めの数週間は乾燥、ヒリヒリ感などが出る可能性があること、衣類などに付着すると色落ちする可能性があることに注意が必要ですが、にきびの治療・予防として長期的に使える安全な薬です。
新しく登場した「ベピオローション」の方が刺激感が少ないため主にこちらを推奨しています。
また顔だけではなく体のにきびにも使用することができます。
ディフェリンゲル(アダパレン)
1日1回外用する薬です。
皮膚のターンオーバー(生えかわり)を調節することで毛穴の詰まりを改善する薬で、
ベピオ:ピーリング作用で外側から
ディフェリンゲル:ターンオーバー調整で内側から
毛穴の詰まりを改善すると言えます。
ベピオゲルと同じく使い始めの数週間は乾燥、ヒリヒリ感などが出ることがあるのに加え、妊娠中は使用ができないことに注意が必要です。
エピデュオゲル
1日1回外用する薬です。
ベピオの成分とディフェリンの成分両方を配合しており、保険適応薬の中では一番治療・予防効果の高い薬です。
その代わりに乾燥・ヒリヒリ感は出現しやすいので、まずはベピオかディフェリンのどちらかを開始し、効果が不十分な場合にエピデュオにランクアップすることが多いです。
デュアック配合ゲル
1日1回外用する薬です。
ベピオの成分(過酸化ベンゾイル)と抗生物質のクリンダマイシンを配合した薬で、
毛穴の詰まり解消
にきび菌の殺菌
両方をこなせる万能な薬です。
1本でしっかり治療できるので抗生物質を漫然と長期使用すると耐性菌(効くはずの抗生物質が効かないタイプの細菌)出現リスクが高まるため、赤にきびが落ち着いてきたらベピオ等に切り替える必要があります。
イソトレチノイン
皮膚のターンオーバーを是正し、また皮脂分泌を抑制することで強力ににきびを治療・予防する飲み薬です。
海外ではにきびに対して保険適応のケースもありますが日本では現状保険適応外となります。
当院で取り扱いのあるにきび治療薬の中でもっとも強い作用を持ち、他の治療でなかなか改善しなかった重症の方や、にきびを根本的にできにくくしたい方に提案させていただくことが多い薬剤です。
1日20㎎から開始し1~3か月程度で新しいにきびができにくくなることが多いです。
一定期間(体重50㎏の場合8~12か月程度)内服を続けることで、毛穴の詰まりや皮脂分泌が起こりにくい肌質になりイソトレチノイン内服を終了してからも再発を予防できると言われています。
妊娠中は使用できないこと、定期的に採血検査が必要であること、皮膚や唇が乾燥しやすくなることなど注意点がいくつかあり綿密な診察やプランニングが必要ですが、強力なにきび治療薬です。
アゼライン酸
1日2回外用する薬です(保険適応外)。
角化異常抑制作用、皮脂分泌抑制作用によりにきびの治療・予防効果があります。
またにきび以外では「酒さ」という顔の赤みや赤いぽつぽつが出る慢性疾患にも効果が期待できます。
安全性が非常に高く妊娠中・授乳中でも使用できるのが特徴で、にきび治療と肌質や皮脂の改善を兼ねて長期使用をしても安全性に問題はありません。
塗ったときにピリピリ感を感じてしまう方がいることに注意が必要です。
ベーシックケアAZシリーズ
AZAクリアの主成分アゼライン酸を含有した製品です。
いずれも皮膚に刺激が少ない保湿成分や皮脂分泌を抑制する成分が含まれており、にきび・酒さでお悩みの方や敏感肌の方でも使いやすいような配合となっています。
ケミカルピーリング
皮膚の浅い層に作用し古い角層や毛穴の詰まりを取り除くことでにきびの治療・予防が期待できます。(保険適応外)
にきび以外に肌質・毛穴やくすみの改善効果も期待できるため、習慣として定期的に施術を受けられる方が多くいらっしゃいます。
にきび菌を殺菌する治療
抗生物質の外用薬
ダラシンゲル(クリンダマイシンゲル)
アクアチムクリーム・ローション(ナジフロキサシンクリーム・ローション)
ゼビアックスローション・油性クリーム
いずれもにきび菌を殺菌する作用のある抗生物質の外用薬です。
ダラシン(クリンダマイシン)とアクアチム(ナジフロキサシン)は1日2回、ゼビアックスは1日1回外用することを推奨しています。
抗生物質は毛穴の詰まりを取る作用はありませんが、炎症性皮疹であり赤にきびや膿の溜まったにきびに非常に効果的です。
漫然と使い続けてしまうと耐性菌(抗生物質が効かない菌)が発生してしまうリスクが高まるため、炎症性のにきびがあるときだけ使用することがポイントです。
抗生物質の内服薬
外用薬と同じく、ずっと使い続けるのではなく炎症性皮疹(赤にきび、膿の溜まったにきび)がある時だけ使用するのが望ましい薬剤です。外用薬よりも強い治療効果が期待できます。
ビブラマイシン(ドキシサイクリン)
国のガイドラインで最も推奨されている抗生物質です。
炎症性皮疹(赤にきび、膿の溜まったにきび)が多発しているタイミングで1~2週間程度内服を続けることで、皮疹の改善に効果が期待できます。
ミノマイシン(ミノサイクリン)
上のビブラマイシンと似た構造の抗生物質です。
ビブラマイシンよりも吐き気・めまい・色素沈着などの副作用が多いとされていますが、個人差によりビブラマイシンよりも治療効果が高いことがあり、当院ではビブラマイシンがあまり効果的ではなかった時に使用することがあります。
ルリッド(ロキシスロマイシン)
テトラサイクリン系の抗生物質であるビブラマイシン、ミノマイシンとは異なるマクロライド系の抗生物質です。
大きな副作用が少ないため、他の抗生剤で吐き気やめまいが出てしまう方でも使用しやすい抗生物質です。
Vビームによるレーザー照射
炎症性皮疹(赤にきび、膿の溜まったにきび)に対してレーザー照射が有効だったという報告があり、当院でもレーザー照射を実施することがあります。(保険適応外)
赤く残ってしまったにきび跡にも同様のレーザー照射の効果が期待できるため、どちらも合わせてレーザー照射を行うケースもあります。
まとめ
にきびの治療は
①毛穴の詰まりを治す
②にきび菌を殺菌する
の2つの観点から治療を行う必要があります。
保険診療での治療が基本となりますが、保険適応の治療では改善しない場合や、保険適応の治療で副作用が出てしまい継続が難しい場合は自費診療での治療を提案させていただく場合があります。
多種多様な治療方法があるため、ひとりひとりに最適な治療を提案させていただきます。